* 夏の黄昏に : ハイネ
夏の夕べの ほの昏(くら)き
みどり 牧場の 蒼穹(そうきゅう)に
月 香(かぐわ)しく 照り渡る
蟋蟀(こおろぎ)は せせらぎの ほとりに 集(すだ)きゐて
そのとき 水辺に うごくは なにものぞ
旅人 ひとり 佇(たたず)み
聞くは しじまの 息づかひ
噫 刹那 眼に入りし 水浴する 水の精
小川の水に ひとりゐて
その項(うなじ) 白百合のごと
月の光に ほのぼの 泛(うか)びくる・・
H.Heine; Dammerung liegt der Sommerabend